技術員採用 最新の工作機械で学生や教員の研究を支える

渡邉和憲 理工学部実験教育支援センター

慶應大学理工学部・理工学研究科卒。現在は理工学部実験教育支援センターにて教育・研究のアシスト業務を担っている渡邉和憲さん。これからの目標や仕事を通じての喜びについて聞きました。

大学・大学院時代は機械加工を研究

私の子供時代はASIMOが歩くどころか走るのが当たり前のような、ロボット技術が発展している時代だったので、自分もいずれロボットを作ってみたいという意識が芽生えたのだと思います。
大学では機械工学科の閻研究室に所属し、機械加工の研究をしました。私がおこなっていたのは放電加工という、電気の力で材料を加工する技術の研究です。学部の4年から修士の2年までの3年間、様々な素材を加工しながら各々の材質の特性をみる研究に没頭しました。

大学院時代から、嘱託職員として理工学部実験教育支援センターにて2年間勤務し、2016年4月に専任職員として採用されてからは三田学生部での2ヶ月間の職場研修を経て、2016年6月より理工学部実験教育支援センターで勤務しています。
三田学生部での2ヶ月間の職場研修のときは、基本的に電話応対や窓口対応がメインの業務でした。学生部の法務研究科にて研修をしていたので、時には法律事務所から電話がかかってくることもあり、知らない専門用語などが出てきて戸惑うことも多かったです。その頃は毎日が緊張の連続でした。しかし、電話対応などでは、職場の先輩方がこうしたほうがいいなど、細かくアドバイスや指導をしてくださったので、非常に良い経験となりました。

最新の工作機械がそろっていることが何よりの強み

所属先の実験教育支援センターでは理工学部全体の教育・研究のアシストをしており、特に私の勤務しているマニュファクチュアリングセンターでは機械工学科などの工作機械を使う授業の対応や、学生や教員の研究に必要な実験装置を作ったり、装置をどうやって改良したりすべきかをアドバイスをする役割を担っています。理工学部で加工してものを作りたいときは、最新の工作機械を多数揃えているマニュファクチュアリングセンターが中心となって活躍しています。

2014年、理工学部75周年のときに、マニュファクチュアリングセンターが設立されました。機械も設備も新しくなって、より良いサービスが提供出来るようになったのではないでしょうか。"工場"と呼ばれる施設はどの大学の理工学部にも備わっていますが、ここまで最新の工作機械がそろっている大学はそうそうないと思います。これらの工作機械を用いることで精度を要求される実験装置を作ったり、複雑な加工をしたりすることが可能です。研究で使用するものを外注するとなると、通常1ヶ月から2ヶ月かかりますが、学内で1週間程度で加工できるということは、学生や教員にとって非常に大きなメリットであると感じてもらえると思います。この恵まれた環境をより多くの方に利用していただくことが私の今の目標です。

学生に機械と触れ合う喜びを伝えられる

4年に一度、サイバスロンという大会があって、今年行われる本大会に向けてチームで電動車イスを製作しています。障がいをお持ちの方が、いかにして機械の力でその障がいを乗り越えるかというテーマで開催される大会で、世界各国から大学や企業など様々なチームが参加します。我々のチームは4足のキャタピラで階段や傾斜に合わせて自分の姿勢を変えながら移動をサポートする電動車イスを開発しました。災害救助ロボットをイメージしたもので、私は設計から加工まですべて携わっています。将来的には実用化を目指し、高齢者の方が自宅で使えるレベルに仕上げようと改良を検討しています。
昨年行われた日本大会では、全体で3位、日本のチームの中では1位の成績を収めました。今年はスイスで世界大会があるので、優勝できるように学生や教員と頑張っています。
私たちのこのサイバスロンの取り組みは、学生たちが工作機械やロボットなどの機械と触れ合うよいチャンスになっていると感じています。学生の楽しそうに取り組む姿を見ると、自分の仕事にやりがいを感じます。結果的に社会貢献にもなるので本当に日々充実しています。

就職してすぐの頃は工作機械の使い方はあまりわかりませんでしたが、授業がない時期を利用して、機械の使い方の講習を受けに行ったり、自分のスキルを磨くことに時間を費やしたりしています。そうやって経験を重ねることで、今まで出来なかった加工が可能になり、それが学生のためになったりするととても嬉しいです。
当然ですが学生は毎年入れ替わります。学生の研究内容に応じて加工の内容も変わるので、毎回、新鮮な気持ちで業務にあたっています。この仕事は本当に奥が深いといつも感じています。

最新の技術や世界のニーズを学生に伝えたい

マニュファクチュアリングセンターの自慢出来るところはやはり、設備が整っているところです。この恵まれた環境のおかげもあって、時を重ねるごとに加工の技術が身につき、学生への指導や対応の質が向上してきているという実感があります。学生や教員をサポートする身として、自分自身がどう成長して行くべきかを考えると、自らのスキルを常に磨いていく必要があると感じています。そして、時代の最先端の情報を得るためにも今後は展示会などに情報収集しに行き、世界の工作機械のニーズや、最新の加工技術を学生にしっかりと教えられるようになろうと考えています。

慶應義塾の技術員として働くことを考えている学生さんや、まだ自分のやりたいことが明確になっていない方々に、私が仕事する上でアドバイスできることがあるとすれば、人の和、人間関係を大事にするということです。サイバスロンに出場するマシンを作る際に感じたことでもあるのですが、1人では出来ないことが、みんなの知恵や能力を合わせることで実現できることがあります。自分の力だけでは全然うまくいかないときもたくさんありましたが、そんなときは周りの方に相談して、やり方や進め方を固めていったことで良い結果に繋がりました。ですから、人付き合いを大切にしていって欲しいです。