新卒採用 大学院学事業務に携わる

学部・修士時代を通じて、行動経済学を学んできた土方雄介さん。慶應義塾に就職してからも、その専門知識や学習意欲が、日々の仕事につながっていると言います。自身の得意分野を生かせる、慶應義塾の職場としての特徴とはどこにあるのか、仕事内容やそのやりがいについて聞きました。

大学院を修了後、慶應義塾大学院担当に勤務。
学びが生きる日々

立命館大学を経て東京大学大学院を修了し、2015年に慶應義塾に新卒採用で就職しました。経済学の専攻で、専門は2017年にシカゴ大学のリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことでも注目を浴びた行動経済学です。さらに詳しくお話すると、実社会のデータや、現実社会を模した実験によりデータを集め、当たり前と思われていることと現実との"ずれ"を実証的に明らかにする、ということをやっていました。学生時代って、サークルやバイトなどの学業以外に打ち込む人もいると思うのですが、僕は勉強しているのが一番楽しくて、論文を読んだり研究したりと、夢中で取り組んでいました。自分に合っていたんでしょうね。研究を続けたくて、学部2年の時に大学院へ進学しようと決めました。今でも、休日に経済学の本や論文を読みますよ。

今は、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(呼称:KBS。MBA、Ph.D.といった学位を授与するプログラムを提供。短期間のエクゼクティブセミナーを提供する慶應義塾大学ビジネス・スクールの側面もある)の学事を担当しています。自分が学んできた分野とは若干異なりますが、領域が近いので、以前から知っている先生も多くいらして、非常に興味を持って日々の仕事に向き合っています。KBSに配属が決まった時も、先生方のCurriculum Vitae(CV:研究者の英文履歴書)と論文に目を通してからお会いしたら、とても喜んでいただけてうれしかったです。これまで学んできたことが、今に生きていますね。

教員と学生の化学反応をサポートできる喜び

メインの仕事は、学事担当として履修や試験などのカリキュラムを考えることはもちろん、入学から修了に向けた、さまざまな相談の窓口をしています。学生と触れ合うことが多いですね。そのほかに、入試や広報、施設管理なども担当範囲で、最近は国際関係も担当するようになりました。配属前の2カ月の研修期間中は、日吉キャンパスの独立館で、二十歳そこそこの学部生の担当をしていたので、KBS配属後、僕より年上の、35歳前後の学生が多いことには驚きました。自分の経験も含めて、これまでさまざまな学部や大学院を見てきましたが、KBSでは大学の新しい一面を見ている気がします。KBSには25人以上の専任教員がいて、博士号を持つだけでなく、さまざまな実務経験や企業とのつながりを持っています。学生のみなさんも多様なバックグラウンドの持ち主ばかりです。知識やノウハウ、人脈の宝庫なので、その環境を使い倒してほしいですし、僕たち職員もそのサポートができればと思っています。

学生からの相談は、非常にさまざまです。講義で学んだことを実践するために、KBSの教員はもちろん、他大学の学生や教員、企業を巻き込んでビジネスコンペを開催したい、とか。あるいは、自身の経験や人脈を生かして勉強会や講演会を開きたいんだけど、どうしたらいいか、とか。教員や学生同士の化学反応と言ったらいいのでしょうか、今ここでしか生まれない発想を実現に向けてサポートできることが、僕のやりがいですね。

今度、オープンキャンパスから在学中を通して接してきた学生が、初めて修了を迎えるんです。それもとても感慨深いです。小中学校のクラス担任ではありませんが、さまざまな場面で接してきた学生が、KBSでの学生生活に満足して修了を迎えてくれるかどうか、気にかかっていて...。日々、満足そうな顔を目にしているので、きっと大丈夫だろうと思いつつ、実際にその場面を迎えたら、すごく喜びを感じるだろうなと今から楽しみにしています。

「半学半教」の風土が、仕事のやりがいにつながる

学生や教員とのやりとりでは、学んできた行動経済学の知識を生かせる部分もあります。例えば、相手に提出物などの期限を守ってほしい時や期限が過ぎてしまった時に、どういうタイミングや、どういった文章で連絡をすると効果的かというのは、行動経済学で一部実証されているんです。その知識を応用して、業務に臨んでいます。大きな変革ではないですが、裁量の範囲内で、できる工夫をしています。まだ3年目で、職場は先輩職員ばかりなのですが、僕が新しい取り組みや工夫を提案すると、みなさん、とても快く受け入れてくださいます。1年目の時からそうなんです。慶應義塾の風土だと思います。とてもいい職場です。

慶應義塾を就職先として希望したのも、面接過程をとおして、そういう風土を感じたからです。面接で、大学院での研究や勉学の成果をどのように職場で生かせるか話した時も、他に受けたどの企業よりも、一番興味をもって熱心に聞いてもらえました。福沢諭吉先生の「半学半教」の教えが根付いているのだと思います。職員の一人一人が常に学ぶ気持ちがあるというか、年齢や年次に関係なく、話を聞き、受け入れてくれる雰囲気があるんです。採用試験を受ける前よりも、受けてからのほうがより興味が湧いて、ぜひここで働きたいと思いました。

今後は、KBSだけでなく、研究科の枠を越えて、日吉学生部の大学院担当として僕自身がリードしていろいろなことにチャレンジしたいと思っています。後輩もできたので、切磋琢磨しながら、若い力でもっともっと慶應義塾を元気にしていきたいですね。